『エチカ』試訳 ~初級でも分かるラテン語~

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今回から、不定期にスピノザの『エチカ』のラテン語の試訳をやっていこうと思う。

「マラ8でラテン語入門!!!」と、どっちか迷った。それくらい軽い男である。)

ラテン語は、むずかしいとされ、また実際むずかしいのだけど、以下のエチカの箇所などどうだろうか?


Nam una, eademque res potest eodem tempore bona, et mala, et etiam indifferens esse.
Ex.gr. musica bona est melancholico, mala lugenti ; surdo autem neque bona neque mala.

なぜなら、ひとつの、そして同じ物が、同じ時に、良く、悪く、またよくもわるくもないことがありうるから。
たとえば、音楽は、憂鬱な人にはよく、喪に服すひとには悪くある。
耳のきこえない人にはよくもわるくもない。 第四部 序言

英訳
For one and the same thing can,at the same time,be good,and bad,and also indifferent.
For example,music is good for one who is melancholy,bad for one who is mourning,and neither good nor bad to one who is deaf. (curley)

独訳
Denn ein und dasselbe Ding kann zu derselben Zeit gut und schlecht und auch indifferent sein. Musik z.B.ist gut fūr den,der schwermūtig ist,schlecht fūr den,der in Trauer ist,und weder gut noch schlecht fūr den,der taub ist. (Bartuschat)

[語彙]
nam (cnj)
 なぜなら、たしかに、for,truly
lugeo,ēre,lūxī,lūctum
かなしむ、なげく mourn, grieve,trauern,lamenter
ex.gr 
= exempli gratia (e.g.) 
exempli(gen) gratia(abl)
grātia, ae, f
気に入ること、優美 grace,favor,Beliebtheit. 
 gratia (+gen とともに) ~のために 例のために
surdus,a,um
耳のきこえない deaf,taub
autem (cnj)
 しかし =but,aber
etiam
=also


英訳、独訳をつけたか、そんなに、構文として、むずかしくない。
(というか英語圏の人は、アドバンテージある、語彙でも文法でも。)
語られている内容も、そんなにむずかしくない。

音楽はメランコリーな人にとっては、グッドだ。(快活な音楽を想定しているのだろう。)、
喪に服す人には、わるい。(その人にとっては邪魔)
そして、耳が不自由な人にには、音楽は良くも悪くもない
。」


自然界には、それ自体として、「善」「悪」「どちらでもないアディアフォラ 中間物adiaphora」、「完全」「不完全」といった「ラベル」が貼られているわけではない。
「ラベリング」は、人間によって加工されたもの、人間が作り出した「思惟の様態」に過ぎないのだと。
事物は内在的に善ないしは悪ではなく、我々との関係においてのみ善ないし悪になるのだと


以上。
もちろん、自分はスピノザの専門家ではないので、誤り等があれば、指摘して欲しい。
とはいえ、『エチカ』は、専門家だけのものではないはずだ。
モームやゲーテが好んだように、分かる箇所だけ読んでも、魅力的な作品だ
特に日本人には親しみやすいと思う。

訳する箇所は、短くて、エッセンスが分かるような箇所、を取り上げていければと思う。
とはいえ、面白くて、格言ぽいもの、笑える箇所も訳してみたいと思う。
面白くなければ、続かないので。笑

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